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戦場に響く鈴の音
第8章 開戦

最悪の宴でしかなかった。
勝利に浮かれた野郎共がうじゃうじゃと俺にまとわりつくだけの宴…。
俺が保護すべき小姓は戦とは関係なく負傷して熱を出して寝込んでる。
保護者失格の俺は1人で不機嫌なまま酒を喰らう。
だから翌朝は最悪だ。
「神路…、臭い…。」
と鈴に言われる羽目になる。
「熱は?」
俺が鈴の額に触ろうとすれば鈴は酒臭いと俺から可愛い顔を背けてしまう。
「鈴…。」
「今日から天音に行くのだろ?」
鈴がさっさと約束を果たせと俺に迫る。
「鈴を輿へ…。」
そう命じれば雪南が用意した輿に怪我人である鈴だけが乗せられる。
朝、西元を出れば歩きでも夕刻前には天音に着く。
「かみ…殿…、吐き…そうです。」
馬の上で馬に乗れない茂吉を乗せた直愛が情けない声を上げる。
因みに茂吉は馬に揺られ、既に吐いた後だ。
明らかに鈴の教育には良くないと思われる漢達に囲まれて輿で運ばれる鈴の事が気になって仕方がない俺は事ある毎に鈴へ話し掛ける。
「鈴、輿が揺れて気持ち悪くないか?」
「鈴、大丈夫そうなら馬に乗るか?」
鈴からは無言の返事…。
挙げ句に煩いとばかりに輿の窓が閉められる。
「雪南っ!?」
「本当に煩いです。黒崎様…。」
「だって鈴が…。」
「今朝、飲ませた薬のせいで眠いだけですよ。少しは静かにしてやるのが大人の努めです。」
馬上でゲーゲー騒ぐ茂吉と直愛に対して、一応は冷静に見えても実は二日酔いで頭痛を抱えている雪南が睨む。
「俺は騒いでないっ!」
「だから、そういうのが煩いです。黒崎様…。」
輿を囲むおかしな一行はゾロゾロと天音に向かう。
今回の戦で負傷した兵も連れている。
負傷兵は天音にある兵訓練所で治療する。

