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戦場に響く鈴の音
第9章 拝命



「はいはい、せいぜいバレぬように今夜は早く寝る事にする。直愛と茂吉の相手は雪南がしろよ。」


一応、今の段階で直愛と茂吉は黒崎の客。

客は3日間は饗すのが礼儀。

3日過ぎれば客でなくなり屋敷に雇われるか屋敷を出て行くのが仕来りになる。

その客に酒を振る舞い相手を務める役目から逃げたい俺は雪南にそれを押し付ける。


「何故、私が…。」

「主の俺の代理を務めるのは軍師の役目だ。」

「それなら小姓の鈴も同じ、それに直愛殿なら鈴の接待の方が喜びますよ。」

「鈴はまだ子供だからな。酒の席には向かぬ。」

「黒崎様が8つの時には既に酒を嗜んでおりましたが?」


あー言えばこー言う…。


「後はよろしく…。」


酒を持ち雪南から逃げる。

たまには俺が鈴に構う時間を寄越せと思う。

天音からの帰路で寺子屋に通いたいと願う鈴はずっと直愛や雪南にベッタリだった。

夜は俺の床へ潜るなり寝てしまう。

腹が立つから柊の来栖では茂吉を連れて一晩だけ絖花の妓楼へ足を運べば、その翌日から鈴は燕に着くまで俺と口を利かなくなる。

鈴が何を考えてるのかが俺にはわからん。

俺の為に寺子屋に行くのだと鈴は言う。

なのに時折、俺から離れたがる素振りを見せる。


「鈴、風呂は済ませたのか?」


灯りすら点けてない俺の部屋で月明かりに照らされた鈴にそう問えば、俺すら見ずに鈴は俺の床に潜ろうとする。


「鈴、まだ寝ない。」

「鈴は寝る。」

「小姓が主よりも先に寝るな。」

「神路は鈴なんかが居なくとも勝手にあちこちで寝るだろ。」


来栖での嫌味をまだ言う。


「だから…、遊郭には鈴が一人前になったら連れてってやると言っただろ。」


何度、そう言っても鈴はフンッと鼻を鳴らして女みたいに俺から顔を背ける。


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