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戦場に響く鈴の音
第9章 拝命
鈴の望むようにするべきか?
鈴が俺を望むのなら…。
あの程度の酒で酔うはずのない俺が鈴の色香に惑わされる。
鈴を抱き締めようとした瞬間…。
不意に鈴は俺から身体を離しクスクスと笑い出す。
「鈴?」
「もっと…、して欲しい?」
女のように上目遣いで俺を見る気まぐれな仔猫が舌なめずりをしながら俺を脅す。
「要らぬ…。」
「して欲しいと神路は言うだけで良いのに…。」
「要らぬと言ってる。」
「ふーん…。」
偉そうな仔猫が欠伸をする。
「お前…、自分の主をナメてんのか?」
「舐めさせてくれないのは神路だ。」
「エロガキを性欲の対象にする趣味はねえよ。」
鈴に背を向けて寝たフリを決め込む。
「鈴は…、神路に愛されてると感じたいだけだ。」
背中越しに泣きそうな声がする。
愛してるさ。
お前を小姓としてな…。
そんな言葉で鈴が納得するとは思えない。
鈴が俺に何を求めてるのかがわからん。
梁間とは違う何か…。
義父に対しての鈴は本物の父親を求めるように懐いてる。
雪南には疎ましさと尊敬を…。
直愛には誠実さと尊厳を…。
なら俺には?
俺に何を求める?
そう聞こうと振り向けば気まぐれな仔猫は小さな身体を更に小さく丸めて眠ってる。
その仔猫の頬に口付けをする。
寝てる時は無邪気な仔猫…。
ずっと、そのままで居て欲しいと願うのは俺の身勝手かもしれん。
鈴が漢に育つまで…。
それまでの保護者だと自分を制御する。
俺が悩もうが何をしようが朝は勝手にやって来る。
「そろそろ起きねば切り捨てますぞ。」
冗談が通じない雪南が冗談に見えない体で俺の首筋に刀を当てる。