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戦場に響く鈴の音
第9章 拝命
態度が悪く、偉そうな小姓…。
明らかに俺が甘やかしてると世間からは言われる。
その反面、鈴の能力の高さが俺に対する評価の高さとしては有り余る評価になるには違いない。
義父に本を読んで貰ってから僅か3ヶ月…。
既に鈴は寺子屋の初級学習は終えた形になっている。
雪南以来の天才だと言われる日はすぐに来る。
鈴は見栄えが良いだけの小姓ではない。
寺子屋に通わせて1年もせぬうちに鈴を欲しいと言い出す一門が現われるに決まってる。
「ある意味、良い拾いものをしましたね。」
雪南の嫌味に頭が痛くなる。
鈴が立派に成長すればする程、その主として俺も揺るぎない立場にならねばならぬ。
「登城の準備をする…。」
雪南から受けるプレッシャーから逃げ出す為に風呂に行く。
夕べの鈴の事が頭を過ぎる。
あいつは何故、ああなのだ?
俺に構わず、やたらと勉強をする。
かと思えば主を主と思わぬ態度を振る舞い、床に入れば俺を誘う素振りを見せる。
愛されたい子供…。
俺はそんな感情を御館様に抱いた事がない。
俺が考えたのは李のような武将を潰す事だけだ。
鈴の存在を先に知ってれば梁間も晒し首にしていた。
俺の中には怒りしかない。
その事を考えるといつだって頭に血が上る。
頭を冷やす為に水を被り、風呂から出て登城に備える。
今夜の登城は義父が鈴と輿に乗り、俺や直愛は馬に乗る。
茂吉だけが留守番である事に口を尖らせるが身分の違いは如何し難く、どうにもならない事である。
黒炎に着けば義父が鈴を連れて先に御館様の謁見に参列する。
俺は謁見の間の控えの間で直愛や雪南を後ろに従えて御館様に呼ばれるのを待つ。