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戦場に響く鈴の音
第9章 拝命



「西方領主代理、黒崎様のご登城っ!」


伝令の声がして謁見の間の襖が開かれる。

中央の台座には変わらぬ笑顔で俺を見る御館様が居る。

御館様の前の座敷には左右に別れて着席してる家臣が50名ほどが居て、一斉に俺達の方へと視線を向ける。

そして、その視線はすぐに義父の後ろに控える鈴へと移る。

御館様から見て左の一番前に義父が居る。

右側には秀幸…。

後は黒崎に尻尾を振るか宇喜多に尻尾を振る家臣が並んでるから、城内の権力争いはわかりやすい。

ここで黒崎の手柄と気前良さを御館様の家臣達に見せ付ければ、今は宇喜多の末席に並んでる家臣がいつの間にか黒崎側に座ってるなんて事も暫しある。


「よう戻った神路、近う。」


御館様はご機嫌で俺を呼ぶ。

俺が御館様のお気に入りなのは周知の事実。

今夜の謁見は大河家臣の殆どが顔を並べてる。

黒崎としては余裕がある、この状況で俺は鈴が気になるからとその余裕を見失う。


「どうした?神路…。」


御館様が動かない俺を促す。


「いえ…。」


御館様に言われるがまま御館様の前まで歩み寄る。

今は黒崎と直愛の立場だけを考えろ。

御館様の前で胡座をかき、一礼すれば御館様の方から俺にこの謁見の本題を持ち掛ける。


「あの笹川を堕とすとはな…。」


御館様の言葉に俺の左右からざわめきが起きる。

万里のオッサンは由の50万兵士長…。

蘇で200万の兵を束ねる事を許されてるのは筆頭の黒崎と宰相の宇喜多だけだ。

強大な兵士を束ねる力を持つ者は国へ兵が叛乱を起こす危険と常に背中合わせであり、国に対して絶対に裏切りを許さない覚悟と、それだけの忠義が要求される。

万里が持っていた50万の兵を束ねる兵士長という立場は由での権威が高い事を示す。

その万里を若造がたった2万の兵で討つとは誰も予想をしてなかった事態である。


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