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戦場に響く鈴の音
第9章 拝命
万里の油断が俺に勝利を齎(もたら)した。
俺の快挙に嫌な表情を示すのは宇喜多側に座る家臣…。
当の秀幸は涼しい顔で俺を見ずに、何故か義父の後ろに控える鈴をじっと見つめてる。
秀幸に苛立ちを感じる。
蘇の宰相は寺子屋にも口を出す権利を持つ。
黒崎側で気に入らないと判断された寺子は宇喜多の権限で寺子屋からの追放も可能であるが故に、鈴が何かをやらかせば秀幸は容赦なく鈴を寺子屋から追放するに決まってる。
俺が迷う間に御館様が
「先の梁間討伐の任の褒美も含め、黒崎には充分な褒美を取らすつもりだ。何なりと望みを言え。」
と俺を詰める。
迷ってても仕方がない。
兵への報酬は既に出てる。
黒崎には充分な報酬が黒炎から支払われた。
後は…。
「ならば現在、新たに築城する西元の城主に笹川の首を取った奥州は直愛を据えて頂けませぬか?」
俺の言葉に間は一気にざわめきを増す。
「奥州の!?」
「三男だったな。」
「では奥州は黒崎に?」
奥州の領主であり、蘇の25万兵士長である直愛の父は宇喜多側の列に座ってる。
宇喜多側家臣が騒ぐのは、その為だ。
一方の黒崎側は落ち着いたもので薄ら笑いを浮かべながら俺の判断を尊重する。
地方とはいえ城主の地位。
奥州如きが無下に出来る報酬ではない。
しかし、この先は奥州内で直愛に付く者は全て黒崎が手に入れる事を示す。
三男とはいえ直愛だけでも2万の兵は持っている。
それを黒崎が手に入れる。
気に入らない宇喜多勢が落ち着きを失くすには充分な状況で義父は穏やかに笑ってる。
俺には御館様の後ろ盾があるからだ。