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戦場に響く鈴の音
第10章 遊郭



この子の警戒心は飛び切りだ。

雪南や直愛にすら心を開くのに時間を要した。


「鈴…。」


御館様は常に俺の味方であり、黒炎の寺子屋に通うならば鈴の味方になる人だと鈴にわからせる。


「6つ…、後ひと月で7つになる。」


ぶっきらぼうな鈴の答え…。

態度の悪い俺の小姓…。

卑しい生まれの者が育てる小姓はその程度だと宇喜多側の家臣から嘲笑が起きる。


「7つか…、良かろう。鈴は黒炎の寺子屋で思う存分に学べ。秋からの学に参加を許す。春には上級に上がれば良い。」


御館様が雪南と俺を威圧する。

鈴が春までに上級に上がる実力を見せねば、恥をかくのは俺達だと御館様が路を示す。

雪南がニヤリと笑う。

形はどうあれ、御館様が鈴を寺子屋に入れる事を認めた。

これで鈴が宇喜多からの嫌がらせを受けても鈴には御館様という後ろ盾がある以上、学の強さだけを見せ付ければ良い。

俺が守りたい者を雪南も守ろうとする。

それは義父も同じらしい。

要件が済めば、鈴を手招きして呼び、行儀に構わず鈴を自分の膝の上に座らせる。

傍から見れば、まるで孫に甘い爺になってる。


「さて、宴じゃ。今宵は無礼講なるぞ。」


ご機嫌な御館様が言葉を発するだけで芸妓や舞子、花魁が一斉に謁見の間へと乱入する。

御館様が抱える数十人の小姓が用意されていた食事や酒を家臣の前へ運んで来る。

義父に何かを言われる鈴が小さく頷く姿が見える。

多分、こういう席での小姓の立場を教わってる。

今日の俺は主賓扱い。

義父の席に並ばず、台座に座る御館様と差し向かいに座る。


「酒が進まぬか?」


御館様が鼻を鳴らす。

俺を挑発する時の御館様の癖みたいなものだ。


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