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戦場に響く鈴の音
第11章 報告



鈴が黒炎の寺子屋に通い出して1年が過ぎる。

由では万里亡き後の笹川領地で内戦が始まった事から野盗と化した万里の残党兵とその家族だった領民が、神と蘇の国境となる白銀山脈に押し寄せ神側と蘇側の村を襲い出した。

俺は御館様の命令で二度ほど西元の方へ出兵したが鈴が俺について来る事はなく、元兵士とはいえ所詮は野盗と化した兵であり大将を持たぬ軍相手では戦と言えるほどの戦にはならなかった。

そうやって主の俺が留守であっても鈴は学問に熱心に取り組み、俺が帰って来ても俺よりも雪南に話があるという態度を取る事が多く必然と俺は胡蝶のところでいじけるだけの駄目な主をやっていた。

やがて胡蝶も遊郭から足を洗い神国の簪職人のところで見習いの仕事をすると言い残し俺の元からは去った。


「つまんねー…。」


鈴が寺子屋に行き、胡蝶も居ない燕の屋敷でやる事のない俺は雪南相手に愚痴を言う。

雪南は忙しいらしく机に向いたまま俺の方など見もしない。


「なあ、つまんないって言ってんじゃん。」


雪南が紙に筆を下ろそうとした瞬間を狙って机を蹴れば流石の雪南も俺に怒りを込めた視線を向ける。


「構って欲しいなら、鈴に言って下さい。」

「あいつ、まだ帰って来ないし…。」


鈴は寺子屋帰りにやたらと寄り道をする。

その原因は黒炎城主である御館様だ。

鈴は約束通りに春には上級へ上がってた。

しかも現在は上級で首席であり、御館様の一番のお気に入りだと黒炎内でもっぱら噂になってる。


「鈴は優秀ですからね…。」


雪南が誇らしげにニヤリと笑う。

俺からすりゃ、あれだけ寺子屋で学んでるのに帰ってからも雪南に家庭教師をさせてるのだから優秀で当たり前だとしか思えない。

そんな鈴を御館様が猫っ可愛がりの真っ最中であり、寺子屋の帰りに鈴を城へ呼び付けては珍しい菓子や高度な書物を与えてる。


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