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戦場に響く鈴の音
第11章 報告



鈴の懐で生暖かくなった文を擽ったく感じる。

文の内容は明日の午後に鈴と2人で登城しろという旨だけが書き記されている。


「なんじゃ、こりゃ?鈴、他に御館様の文か伝言は無いのか?」

「無い…。鈴が預かったのはその文だけだ。」

「内緒にする意味があんのか?」


試験が終わった鈴はしばらく寺子屋が休みになる。

単にまだ幼い鈴を1人で登城させろという訳にはいかないから俺はついでで呼ばれた気分になる。


「本当に御館様は何か言わなかったか?」


胡座をかいた膝の上に鈴を座らせてから問い詰める。


「鈴の事なら聞かれた…。」


鈴が自信なさげに情けない表情をして俯く。


「鈴の事?」

「鈴を産んだおっ母の事と、黒崎の子になるつもりがあるかという話だった。」


鈴の母親の事は義父も聞いた。

母親が貧しくとも生きてるのならば燕に呼び寄せて鈴が元服するまで黒崎が親子の面倒を引き受けるつもりでの話だ。

残念ながら、鈴が覚えてるのは母親が居たという事実だけで、何処の村に住んでたかまでは全く覚えてないと言う。

母親と引き離されて商人から梁間に売られるまで馬車であちこちへ移動した為に距離感も方向感覚も鈴には無い。

唯一の記憶が妹尾という苗字だけ…。

但し、この妹尾の苗字はかなり多く冴と无では妹尾の名だけの村もあるほどだ。

一応は妹尾という名の母親から子を買った商人の行方を茂吉に探らせてはいるが茂吉曰く


『そんな商人は星の数ほど居ますぜ。』


という事なので鈴の母親の事は諦めるべきかもしれないという結論に達してるのが今の状況だ。

鈴自身も母親は病気がちだったから、もしも商人から鈴が働いた分の食事が貰えてない場合は生きてるのが難しいとは思ってる。


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