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戦場に響く鈴の音
第11章 報告

鈴が御館様の正面に座れば鈴の目の前に山積みにした菓子が乗った器を小性が持って来る。
今の小性は宇喜多の一門である倉橋(くらはし)の親戚筋の子だったと義父が言ってた。
黒崎は義父が老体であり、一門も平均年齢が高い為に御館様へ小性に出せる子が居ない。
御館様の嫡子は既に6歳…。
その遊び相手として宇喜多から差し出された小性を眺めながら、黒崎の立場を考えてしまう。
「どうした?神路…。」
俺に話し掛ける時の御館様は昔も今も変わらない。
穏やかな表情で俺に語り掛けるように言う。
「いえ、御館様には寺子屋に通う道中で鈴が何かとお世話になったと聞いております。」
臣下の礼の姿勢を取り、御館様に頭を下げる。
「お前から頼まれた子だからな。それに鈴は実に賢い子であった。蒲江の雪南が通ってた時のように寺子屋の手習い師匠達は緊張が絶えなかったと聞いてる。」
雪南や鈴のように賢い子が筆子だと師匠の間違いを指摘する事がある為に師匠も油断が出来ないと気を引き締める。
今年の黒炎の寺子屋は鈴のお陰で優秀な子が増えたと御館様はご機嫌な様子だ。
拾われっ子の鈴に負ければ恥と考える武家が多く、剣術が全く出来ない鈴に嫌がらせをする子も多少は居たが、学では誰も鈴に勝てずに終わったと御館様が笑う。
「さて、神路…。鈴の卒業はほぼ決定と聞いたが、その後についてはどう考えてる?」
いきなりの質問に戸惑う。
「剣術の苦手な鈴では天音の訓練所に出すよりも蒲江に見させた方が良いと判断しております。今しばらくは雪南が教育をすれば充分かと思いますが…。」
「それがお前の判断か?」
「不十分で在りましょうか?」
俺の答えに御館様は不満そうな表情を浮かべる。

