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戦場に響く鈴の音
第2章 登城

お陰で初めての小姓に甘い俺が小姓を持つのは早過ぎると雪南が神経を尖らせる。
雪南の気持ちは理解が出来るが俺の時は御館様に対してもっと酷かったという自負があるから鈴の小さな我儘くらいは構わないだろうと思う。
「さっさと行って来い。」
俺がそう言えば鈴は天幕の外へ一気に駆け出す。
昔の俺は御館様に口すら聞かなかった。
こいつも俺に地獄の日々を与えるだけだと思い込む俺と御館様は3日間ほど睨み合う関係だった。
それに比べれば鈴が小便を隠すくらいは可愛いもんだとしか感じない。
しばらくすれば雪南が俺の天幕に来る。
「お食事は?」
「当然、鈴と食う。」
その会話だけで雪南が嫌そうに顔を歪める。
「黒崎様っ!」
わかってる。
本来なら武功を上げた家臣を俺の食事に呼んで労いの酒を酌み交わしてやらねばならぬ。
だが、今回の梁間討伐で武功を上げたと言えるほどの家臣は居ない。
直愛もそれをわかってて俺にあまり近寄らない。
下手に近付けば俺に取り入ってると口さがない噂だけが先走る事を直愛は理解してる。
それでも雪南は労いの食を家臣と共にしろと俺をせっついては目くじらを立てる。
「ならば雪南も一緒に食すか?」
「自分はお断りします。」
初日に雪南と鈴の3人で食事をしたが食の細い鈴に俺が構い過ぎると雪南はキレて俺と距離を置く。
鈴の食はかなり細い。
しなくていいと俺が言うにも関わらず、俺の膳の毒味に一口だけ食せば後は何も食べようとしない。
その鈴にまともな食事をさせる為にと躍起になる俺からすれば家臣との食事なんぞ邪魔な時間にしか思えない。
雪南が苛立ちを見せる中、用を済ませた鈴が天幕へと戻って来る。

