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戦場に響く鈴の音
第12章 混乱
義父が鈴という子は俺が居なくなれば飯すら食わずに死を選ぶ子だと言った。
たかが婚姻だ。
天音入りするまでに、それを鈴に理解させようと試みる。
「鈴、こっちに来い。」
鈴に向かって手を差し伸べる。
2つの光が大きく開き、小さく震える白い手が俺の手の先で迷ったまま彷徨う。
「おいで…。」
俺の指先が鈴の指先に絡み付く、その瞬間を狙って鈴を一気に引き寄せる。
軽い…。
とても小さな仔猫が俺の方へ、ふわりと抱き着いて来る。
「鈴…。」
「か…みじ…。」
今にも泣きそうな瞳…。
声を震わせて必死に俺にしがみつく。
「大丈夫だ。鈴…、何も変わらない。俺が誰かと婚姻したとしても鈴は黙って俺の傍に居れば良い。」
いつもの様に鈴の額に口付けをしてやれば、大きな瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
「神路…。」
何がそんなに辛い?
何がそんなに悲しい?
鈴の気持ちを理解してやれない俺は鈴の額や頬に口付けを繰り返して鈴を慰めてやる。
「はぁ…。」
痩せ細った首筋に俺の舌を這わせれば、乾いた小さな唇から熱い吐息を漏らす。
いつだって鈴は俺に愛されたがる。
今だって泣きながらも、半開きの口を舌なめずりした猥りがましい婀娜やかな表情を浮かべながら、細い指先を俺の着物の合わせへ侵入させようとする。
「そんなに俺に可愛がって欲しいのか?」
「鈴は…、神路だけに愛されたい…。」
「エロガキは変わってないな。主の寵愛を欲張るのは、はしたない行為だと寺子屋で学んだだろ。」
「それでも、鈴は神路が居なければ生きて行けぬ。」
狂ったように首を振り、鈴が涙を流し続ける。