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戦場に響く鈴の音
第12章 混乱
「鈴は、ずっと覚悟を決めておりました。女子としていつかは花街へ黒崎様に売られる日が来るやもしれぬと…。」
異常なほど俺に捨てられると怯えた鈴…。
俺は鈴の怯えを見て見ぬふりして一人前の漢にするだけだと貫き続けた馬鹿な主…。
「俺は…、どうすれば…。」
今更、鈴を女子だと認めて良いものかと雪南に教えを乞う。
「まだ選択肢はあります。実際、御館様からは鈴の初潮が来れば蒲江の嫁にしないかとの話もありましたからね。」
「義父が…か!?」
「生憎な事に私は生まれながらの蒲江です。拾われっ子の黒崎様とは違う。ましてや年下の黒崎様が嫁を娶るというのに、私が黒崎から出された嫁の一人を娶ったとしてもおかしくはない話だと思いますが?」
それは最悪の想定として鈴を黒崎の娘にと義父が引き取った場合の話だと雪南が笑う。
「黒崎様がそうおいそれとは鈴を手放さぬだろうと大城主も御館様も御理解を下さっております。ただ、この先は鈴の主として立場をよくお考えなさい。もしも鈴が黒崎となった時、鈴を嫁に望む者は数多い。直愛殿も鈴ならばと大城主に申し立てる可能性は大いにありますよ。」
雪南の言葉を吟味する。
考えろ…。
女子だとした場合、鈴をこのまま俺の手元に置く事が正しいのか?
鈴の初潮は後2年もしないうちに来る。
小性としての限界はそこまでだ。
その先の鈴は義父に黒崎を名乗る事を許されない限り俺の傍には居られない。
俺が嫁を娶るから…。
嫁以外の女子を傍目に侍らせれば、それは妾という存在にしかなり得ない。
黒崎の娘ならば、鈴を貰い受けたがる漢が必ず現れる。
黒崎の家臣とはいえ生まれながらにして蒲江だった雪南はともかく大河の家臣である奥州から黒崎の家臣の風真になったばかりの直愛なら、尚更に鈴を貰い受けたいと願うだろう。