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戦場に響く鈴の音
第13章 捕縛



「宰相である宇喜多様に仕える10万人将は倉橋の一門にて万人将を務めさせて頂いている滝沢 克仁(たきざわ かつじ)と申します。このような席でもなければ筆頭老中、黒崎様の前にお目通りを願う事、叶わぬ身であります故に…。」


見た目も堅苦しいが物言いも堅苦しい男が畳に頭を擦り付けるほどの臣下の礼の姿勢を取る。


「顔を上げろ。滝沢…、もしや、今の大城主の小姓は…。」


30になるかならないかという男は御館様の小姓の面影とよく似通っている。


「ええ、某の嫡男、克明(かつあき)にございます。」


鈴に菓子を運んだ小姓の事を父親として誇らしげに滝沢が語る。


「なら、鈴と同じ黒炎の寺子に?」

「ええ、お恥ずかしい話ですが黒崎様の小姓が来る前までは寺子屋で総代を務めておりました。なのに、ひと月もせず総代の交代を言い渡された不出来な息子であります。」


子を慈しむ滝沢が憎しみを滲ませた視線をライバルだった鈴に向けるが、当の鈴は我関せずといった表情のまま俺の前に置かれた宴の膳を食すのに励んでいる。

元々、鈴は俺以外の他人には殆ど興味を示さない。

そんな鈴の態度が益々と気に入らない体の滝沢は更に俺の方へと躙り寄る。


「差し出がましい口だとは思いますが…、黒崎様…。」


一段と滝沢が声を潜める。


「幾ら、黒炎の寺子で優秀だった小姓だとはいえ、此度の婚姻の儀には相応しくない存在ではないかと…。」

「相応しくないとは?」

「此度の婚礼は我が蘇にとって由との外交を円滑にする為の大事な儀であります。ましてや後の筆頭老中となられる黒崎様の婚礼の席にこのような下賎の子が…。」


滝沢が全てを言い終わる前に俺の手から盃が飛び、広間の柱に当たった盃は激しい物音を立てて無惨なほど粉々に砕け散る。


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