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戦場に響く鈴の音
第13章 捕縛
この騒ぎに、雪南が慌てて俺の傍へと駆け寄って来る。
「黒崎様っ!」
俺を諭すつもりの雪南だが、俺の逆鱗は治まらない。
「誰が、下賎の子だ?滝沢…。」
鈴をゆっくりと膝から下ろし、手元に置いてた刀を握る。
「お怒りはご最もだと存じております。しかしながら、此度の婚姻の儀について、某は宇喜多様より何事も無きようにと全権を委任されている立場にて…。」
最もらしく滝沢が口上を述べる。
「黒崎様の御身を思えばこそ、そちらの小姓はここから燕へと戻すべく…。」
必死に訴える滝沢の首に抜いた刀を当ててやる。
「黒崎様っ!」
「神路殿っ!」
雪南に続き、直愛もが俺と滝沢の間へと割って入って来る。
そもそも滝沢ごときの身分では筆頭老中の嫡子である俺の前に出られるはずもなく、ましてや俺の行動に異を唱える事など絶対に許される行為ではない。
敢えて、それをする滝沢は俺を筆頭老中の嫡子として認める事が出来ない一派であり、鈴を侮辱する事で息子の雪辱を晴らそうとしているとしか思えない。
「質問に答えろ。滝沢…、お前は誰に対して下賎の子だと言ってるのだ?」
俺に対する侮辱は許せたとしても俺の鈴に対する侮辱は認めない。
「この滝沢、黒崎様の御身を思えばこそ…。」
鈴は俺の傍から離すべきだとの主張を滝沢が繰り返す。
「悪いな…、滝沢…、そもそも俺自身が下賎の身だ。宇喜多の思惑通りに政治目的である婚礼は受け入れてやる。但し、婚礼が有ろうと無かろうと俺の小姓である鈴を手放す気は毛頭ない。これ以上、俺の小姓を穢すつもりなら、今ここでお前を切り捨てる。」
「大城主の名を穢す行為となってでもでありますかっ!」
「その御館様が認めた小姓だ。鈴への侮辱は大城主への侮辱に当たるという事実を自分の息子で確認しろ。」
御館様の鈴への猫っ可愛がりは黒炎城内でも有名な話だ。