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戦場に響く鈴の音
第13章 捕縛
ここから先は俺の代わりにと雪南が滝沢と話をする。
「燕を出た瞬間から、黒崎に当てられた金子は全て蒲江に記録させるようにと申し出たはずですよね?」
冷たい顔の雪南が滝沢に詰め寄る。
「某は全てを蒲江殿に報告をして金子を預けております。」
滝沢は平然と雪南に言い返す。
「しかしながら、不思議な事にその金子が記録よりも3割ほど足りてないのですよ。」
「そんなはずは…。」
「それが事実です。つまり、この婚礼用の大名行列の中に金子を抜くような窃盗が混じってるという事になる。」
「それは…。」
「この行列の編成の責任、人事の管理責任などは全て滝沢殿が黒炎より任されていると聞きましたが?」
滝沢が窃盗を犯す様な人間ではないとしても、滝沢が集めた人間の中に窃盗を犯す人間が居れば、その責任の全てが宇喜多から全権を委任されている滝沢の責任となる。
「風真っ!滝沢殿を捕縛しろ。ここはまだ西元の城下になるのだからな。」
雪南が直愛に命令を出す。
西元城主とはいえ直愛は黒崎の一門であり、今はまだ蒲江よりも位が低い扱いとなる。
「しかし…。」
直愛だけが狼狽える。
万人将とはいえ滝沢は宇喜多から配された責任者の権限を持ち合わせている。
「直愛には出来ぬか?ならば水野にやらせるだけだ。」
俺がそう言えば茂吉がニタリと下品に笑いやがる。
今や茂吉は羽多野の一門で特別遊軍の隊長という位に収まってる。
領主代理とはいえ黒崎の出す命令に忠実に従う事が茂吉の出世を早めるのだと理解してる茂吉は喜んで項垂れる滝沢を押さえ込む。
「此度の金子窃盗については既に黒炎へと早馬を飛ばし、状況の指示を仰いでる。黒炎からの決定が下されるまでは黒崎が一門、蒲江がこの婚姻の儀の仮進行役を務める。以上だ。」
今回の騒ぎを締め括る言葉を、宴の広間に居た家臣の全てに伝わるように雪南が言い渡す。