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戦場に響く鈴の音
第13章 捕縛



この宴で俺に忠義を示す家臣がはっきりとした。

実際のところ、黒崎の家臣の中でも俺が黒崎として筆頭老中を継ぐに相応しい人間かの迷いを見せる者が少なくはなかった。

だが、今宵の宴での騒ぎを収めた蒲江が黒崎である俺に忠義を尽くすのならば今まで通りに黒崎に仕えても問題がないと納得をした家臣も増えたはずだ。

宇喜多側の家臣も今宵の茶番劇で黒崎側に寝返る者も出る。

雪南はその流れの全てを計算した上でわざと天音入りの直前で大名行列の足を止めたのだった。

黒崎である俺の婚礼を宇喜多には仕切らせない。

鈴を我が子のように思う気持ちは雪南も俺と同じらしい。

それを全く表情に出さぬ雪南の照れ隠しに笑ってしまう。

無邪気に眠る鈴を抱きかかえたまま中庭を抜けて離れに向かう。


「んっ…。」


離れに入れば鈴が小さな手で眼を擦る。


「起きたか?床に入る前に風呂に入ろう。」


抱えたままの鈴を風呂の方へ連れて行こうとすれば、鈴がイヤイヤと首を振る。


「どうした?」

「風呂なら、鈴はさっき入った。」

「俺が入るから鈴は付き合え…。」


脱衣場まで行けば俺から飛び降りる鈴が逃げ出そうとする。


「だから…、何故、逃げる?」


ジタバタする鈴を捕まえて聞いてみる。


「だって…、神路をガッカリさせてしまう。」


俺が望んだ立派な漢にはなれなかったと今更の事を言い出す。

毎日、鈴なりに風呂へ入る度、何故、自分の身体は男らしくならないのかと悩み続けて俺に隠すのに必死だったらしい。


「女子だとバレない様に隠してたんじゃないのか?」

「女子だと隠す必要があったのか?隠したとしても神路は気まぐれに鈴の着物を脱がせたりしたではないか…。」


率直に事実を言う鈴の口を慌てて唇で塞いでやる。


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