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戦場に響く鈴の音
第13章 捕縛
「まあ、ともかく、もう鈴は何も俺に隠す必要がないだろ?」
「神路は鈴に隠してる事が多いけどな。」
「俺が何を隠してるって?」
「胡蝶という女からの文とか…。」
耳が痛いとしか思えない。
遊郭から足を洗い、神へ移った胡蝶は時折だが文を送って来る。
その内容の殆どは愚痴に近く、許されるなら俺の傍に帰りたいという泣き事のような文だ。
そんな文など鈴に見せる訳にはいかず、僅かな金子を添えて胡蝶に頑張れと返事だけは送ったりもした。
その程度の隠し事でも鈴には気に入らない事柄に当たるらしい。
「鈴が嫌がるから遊女遊びは止めただろうが…。」
自分でも情けないくらいに女々しい言い訳をしてしまう。
「その代わりに黒炎城内に出入りする女中を口説いていたと大河様から聞いたぞ。」
ここぞとばかりに鈴の不満が爆発する。
「あれは俺から口説いたんじゃねえよ。」
寧ろ、言い寄られて一夜だけを共にした名も知らぬ女だ。
胡蝶が去り、鈴も寺子屋で忙しかった事もあり、性的な処理相手として都合が良かったという事実は割愛する。
「後は…。」
まだ俺の女関係を挙げ連ねようとする鈴を止める。
「もういい…、わかった。とにかく今は風呂に入りたい。」
「だから、神路だけが入ればいい。」
「鈴が一緒に入らないと言うなら、他の女と入るぞ。」
そうやって鈴を突き放す態度をすれば、大きな瞳を更に大きく見開いた鈴が顔を真っ赤にして怒りを見せる。
「鈴が一緒に入ればいいのだな?そうすれば神路は他の女とは入らないと言うのだな?」
なんとなく色気のない言い方だが、そこは鈴の必死さが可愛いから許すとする。