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戦場に響く鈴の音
第14章 護衛
宰相である宇喜多の為の手駒に落ちるほど筆頭老中、黒崎は安くはないのだと言わんばかりに蒲江である雪南が進行役を滝沢から毟り取ったお陰で今は状況が好転したが、正直なところ俺個人としては彩里との婚姻に対して考えが纏まらない。
彩里に嫌われて婚姻自体を失くす事は簡単だ。
しかし、それだと人質の女も、ろくに扱えない不甲斐ない漢だと言われ黒崎として認められないまま終わってしまう。
だとすれば…。
考える事が山ほどあるというのに
「神路っ!」
と仔猫が俺の頬を強く抓る。
「はいはい…、鈴の話も聞いてますよ。」
ため息が出る。
落ち着かない鈴は、天音の冬はどのくらい続くのかとか、炭や薪は足りてるのかと、くだらない質問を繰り返す。
考え事をしながら、質問に生返事をしただけで仔猫は頬を膨らませるなり俺の腕から飛び降りて逃げ出しやがる。
「おい、鈴…。」
「少し、屋敷内を散歩して来る。」
拗ねた鈴は台所に向かって駆けて行く。
鈴の行き先は雪南のところ…。
多分、自分が落ち着かない理由を聞く為に、師匠である雪南に教えを乞いに行った。
「頼むから…。」
今はじっとしてて欲しいとも思う。
仮とはいえ婚儀の進行役である雪南は忙しい身だ。
鈴と入れ替わるように男が3人、現われる。
「黒崎様…。」
先頭に居た男はすぐ様に臣下の礼を取り俺の前へと跪く。
「須賀…、久しぶりだな。」
今や万人将となった須賀…。
西元奪還の将は皆がそれなりに出世した。
羽多野は20万人将まで登り、その嫡子も10万人将に収まった事で風真となった直愛とはそれなりの折り合いを付けてある。
その羽多野の腹心と言える須賀なら、黒崎としての胸の内が気安く話せる存在だ。