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戦場に響く鈴の音
第14章 護衛
「本日は、婚礼の御祝いを申し上げたく…。」
畏まる須賀をやんわりと手で制す。
「気持ちは理解をしてるから…。」
余り嬉しくない婚礼の祝いを身内から言われると嫌味に聞こえて嫌な気分になる。
「でしょうね…、私は天音入りが出来ない羽多野殿より祝いを預かって来た立場ではありますが、今日は黒崎様に祝いよりも別の話をさせて頂ければ、自分も助かります。」
俺の気持ちをそれなりに理解をしてる須賀だから、苦笑いを見せながら堅苦しい臣下の礼を崩して座り直す。
今日の須賀は西元城で風間の留守を預かる羽多野の代理人…。
「俺に話?」
俺が義父から筆頭老中を継いだ後の黒崎は、須賀の様な人間が中心になる以上は、今からでも須賀の話は蔑ろに出来ない。
須賀の前に俺が腰を下ろせば、須賀は後ろに控えて居た2人の男に俺の前へ出ろと手招きする。
いや…。
男2人だというのは俺の勘違いだ。
明らかに1人は女子だとわかる。
鈴の様に男装した女子…。
鈴と違うのは、その女子が簡易甲冑を付けており、武士だと示す出で立ちで腰には刀を差してるという部分だ。
2人を見定める俺へ、意味深に笑う須賀が
「こちらは私と同じく羽多野殿に仕える万人将の寺嶋 光栄(てらしま こうえい)と言う漢であります。此度の婚姻の儀に備えて、この御屋敷の警護主任を務めさせております。」
と男の素性を明かす。
「なるほどね…。寺嶋と言ったか?」
とりあえず、寺嶋の方へも声を掛けてやる。
この別邸に来てから鈴が落ち着かない理由は間違いなく、この寺嶋が原因だ。
ここは黒崎の別邸とはいえ、西方領主が滞在する館である。
その為に、門や庭には常に数人の警備兵が立ってて当たり前ではあるのだが、今回はその警備兵が屋敷を二重三重にと取り巻き、数は軽く2000を超えている。