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戦場に響く鈴の音
第14章 護衛



俺の声に反応する寺嶋が深々と頭を下げてから


「黒崎様には、お初にお目に掛かります。寺嶋と申します。先の西元奪還の折は負傷兵として天音に引いた為、全く黒崎様のお役には立てず、悔しい思いをしておりましたところ、此度の警護の話を羽多野殿より頂き喜んで務めさせて頂いた次第であります。」


と堅苦しく述べる。

歳の頃は須賀と変わらない男…。

寺嶋には初めての謁見となるらしく、俺の前では緊張が崩せないと気負いを感じる。


「随分と大袈裟な警護だな。」


婚姻の儀が行われる屋敷では、祝いと称した人の出入りが激しくなる分、ある程度の警護が増えて当然だが、戦をする勢いの数は必要ないと寺嶋を諭してみる。


「申し訳ございません。黒崎様には何かと不自由があるやかもしれませぬが、この屋敷には既に、あの笹川の姫が滞在をしております故の事。油断をして屋敷を焼かれたりすれば羽多野の恥となると羽多野殿より強く言い付かっております。」


西元城を焼き討ちした笹川 万里に対する恨みは根深い。

その焼き討ちに出会った当事者なら尚の事だ。

現に、寺嶋の左腕には薄らとだが火傷の跡が残ってる。

想像するに、焼かれた西元からの撤退の際、城守の責任者だった羽多野を守った1人なのだろう。

この寺嶋の忠義を無下にする訳にはいかないが、ここまで神経を尖らせる必要があるのかと須賀に問う。


「万里の娘、彩里か…。この屋敷を焼き払う様な女なのか?」


俺の問に須賀は


「私は昨日来たばかりなので…。」


と頭を掻いて誤魔化す。


「彩里の伴は?」


由から入った人間の把握はしておきたい。

改めて、寺嶋が報告する。


「姫からは台所を使いたいとの申し出がありましたが、それは蒲江殿が認めないとされたので、姫の伴として認められた女官が3人と警護の男が2人だけしか蘇への入国は出来ておりませぬ。」


寺嶋の報告に更なるため息が出る。


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