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戦場に響く鈴の音
第14章 護衛



「黒崎の殿様にはお初にお目に掛かります。寺嶋の娘の多栄と申します。女子ながら、羽多野様の許しを得て天音の兵学校をこの春には卒業する予定です。」


ハキハキとした物言いが男勝りの勝気な多栄の性格を表してる。

稀ではあるが武士を目指す女子が現われる。

当然だが、嫁ぎ先で読み書きが出来ぬ女子は恥となると考える親は寺子屋にも女子を通わせる。

そこで学よりも武に目覚める女子が武士となる。

寧ろ、女子の武士は特別な任を任せる事が出来ると重宝される事も少なくはない。

婚礼前の年頃の姫君などの警護や遊び相手なら、武骨な漢よりも男装の女子に任せた方が安心を出来る。

要するに俺が女子の鈴を小姓として育ててる状況を誰も咎めなかったのは、鈴をそういう女子剣士にでもするつもりだろうくらいにしか思われてなかったからだ。

今、俺の眼の前には、本物の女剣士が座っている。


「13で天音の訓練所を卒業とは…、随分と優秀だな。」


俺の褒め言葉に多栄が興奮したように頬を紅く染める。


「自分など、黒崎様の足元にも及びません。羽多野様からは常に黒崎様の武勇を聞いておりました。自分は黒崎様の様な武士を目指す努力を続ける所存であります。」


多栄の言葉に父親の寺嶋は苦笑いを浮かべる。


「このように、男勝りのお恥ずかしい娘ですが、此度の婚礼の警護には何かとお役に立てるかと思い、黒崎様の御前に連れて参った次第であります。」


親子で仲良く俺の前へひれ伏す。

婚姻の儀に役立つ女剣士…。


「離宮の警護を多栄にやらせたいという話か?」


須賀へ向き直して問えば須賀は


「いえ、多栄が付く警護は黒崎様の小姓…、鈴殿にであります。」


と真剣な眼差しで答えて来る。


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