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戦場に響く鈴の音
第14章 護衛



これには、流石の俺も驚きを隠せない。


「鈴にか?」


鈴は生まれ卑しい小姓だ。

幾ら、俺の小姓とはいえ、主である俺自身が生まれ卑しい人間であり、普通の姫君の様に警護が付く身分ではない。

しかも、黒崎の家臣であっても多栄は天音の訓練所を卒業する由緒ある武家、寺嶋の娘だ。

身分からして多栄の方が鈴よりも上…。

驚く俺に須賀が柔らかい微笑みを浮かべる。


「これが羽多野殿から預かった婚礼祝いであります。鈴殿の立場は黒崎家臣の皆が理解をしております。もしも由が黒崎家を我が者として利用しようとするならば一番弱い鈴殿を狙うのが定石…。」


俺が考えたくなかった事を須賀の口から聞かされるとは思ってもみなかった。

須賀の言葉は事実だ。

俺という存在を動かすならば、俺が保護する鈴を人質にするのが手っ取り早い。

黒炎じゃ、義父までもが鈴を甘やかしてる姿を晒した。

大河の御館様さえも鈴を猫可愛がりしてる。

宇喜多にせよ由の笹川にせよ、鈴を狙う者がこの先は出て来てもおかしくは無い。

俺の師範であり老体の羽多野から、そんな事実はお見通しだと、此度の祝いとして送り込まれた多栄…。

その多栄が遠慮がちに口を開く。


「うちには鈴殿と同じ年頃の弟や妹がおります故…。」


幼子の扱いにも多栄は慣れていると言う。

女子である多栄をわざわざ鈴の護衛として羽多野が選んだという事は黒崎家臣の皆が鈴が女子であると承知済みであり、俺の勘違いなどは今更な話にしかならないらしい。

多栄の剣術の腕前は羽多野のお墨付き…。

蘇に点在する領主は兵の訓練所を自分の領地に必ず所有してる。

宇喜多は宇喜多領地に、奥州や汐元にも当然、存在する。

訓練所は農民であっても食いぶちが余った子を口減らしとして訓練所に出し、兵として育てたりする場所になるからだ。

能力次第では武家の養子として迎えられ身分が上がる子も居る。


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