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戦場に響く鈴の音
第14章 護衛
そんな訓練所の中でも天音の訓練所は蒲江と羽多野が居る事でレベルが高いと言われている。
その天音の訓練所を僅か13で卒業する優秀な女剣士…。
多栄なら大河の娘警護にと燕に出す事も可能だ。
それは寺嶋家を出世させるチャンスに繋がるというのに、黒崎に実直な羽多野や寺嶋は俺に差し出すと言う。
「わかった。須賀…、羽多野への礼を伝えてくれ。」
多栄を鈴に付ける。
そうする事で西元での戦場の時のように兵の怒りが鈴を襲う事も無くなると思うだけで気は楽になる。
「御意…。」
満足気に須賀が笑う。
「それはそうと、肝心の鈴殿は?」
須賀が辺りを見渡す。
須賀のイメージからすれば俺は片時も鈴を手放さない主である。
「雪南に聞きたい事があると言って台所に行った。」
「聞きたい事?」
「寺嶋には悪いが、警護兵が多過ぎて、人見知りがある鈴には落ち着かない環境になってるからな。」
俺と須賀の会話を聞く寺嶋が
「それは…、申し訳ございません。それでは多栄も居る事ですし、母屋側の兵は少し減らす方向で調整を致します。」
と青ざめて頭を垂れる。
「今は雪南殿が進行役に名を上げたと聞きましたが…。」
須賀が神妙な面持ちで俺を見る。
「ああ、ただし黒炎が認めるかが鍵になる。だから…、須賀。お前が羽多野から独立して10万人を率いるつもりは無いか?」
俺の勝手な言い分に今度は須賀が驚きの表情をする。
「私がですか?」
「俺と雪南は、そのつもりだ。義父も反対はしないと思う。」
俺の婚礼の進行役を一時的に雪南が受けたが、進行役とは本来は仲人がするものだ。
笹川との仲人は宰相である秀幸だった為に、代理人の滝沢が進行役として俺に付けられた。