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戦場に響く鈴の音
第14章 護衛



その滝沢の代わりを雪南が申し出たとしても、黒炎は絶対に認めはしないと俺も雪南もわかってる。

何故なら雪南は未だ独身だ。

進行役は妻を伴った漢に限る。

滝沢の妻は滝沢と共に燕へ戻された。

この天音で黒崎の家臣から正式な進行役を立てるとすれば、妻と子を持つ須賀しか居ない。

その進行役に必要な身分…。

俺を舐めてる秀幸は万人将の滝沢を付けた。

10万人将、倉橋の親戚ならば身分として文句は無いだろうという秀幸の考えを黒崎は認めない。

大河に小姓として息子を差し出している滝沢なら将来の出世が約束されている。

それを覆す身分の進行役を添えるには、須賀を10万人将へ引き上げるしか他ならない。

いきなりの出世に狼狽える須賀に事の状況を説明する。

黒崎家臣、風真は20万の兵を預かる身でありながら、宇喜多、黒崎の両家臣の手前で、たかが万人将の滝沢に尻込みするという失態を晒した。

つまり、今の俺が手駒として使える兵は蒲江の25万とは別に雪南が持つ20万、それに羽多野が持つ30万だけとなる。

筆頭老中として200万の兵を確保しなければならない俺に必要な家臣を増やす事は重大な意味を成す。


「須賀…、10万の将として、此度の婚姻の儀の進行役を受けてはみないか?」


俺からの拝命に須賀は改まって臣下の礼を取る。


「某が黒崎様のお役に立てるのでありますれば、羽多野殿も喜んで下さります。その拝命、謹んでお受け致します。」


須賀の決定が下された瞬間


「迷子の仔猫が屋敷内をウロウロとして仕事が捗りません。」


と顔を顰めた雪南が鈴の手を引いて現われる。


「鈴…、来い。この子は多栄だ。お前の遊び相手として選ばれた羽多野からの贈り物だ。」


人見知りがある鈴は直ぐ俺の後ろに隠れて、寺嶋の娘である多栄の方をじっと見る。


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