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戦場に響く鈴の音
第14章 護衛



生憎な事に、うちの仔猫は嘘に敏感だ。


「この屋敷は、わざわざ案内が必要なほど広くはない。」


仔猫はキュッと口を固く結んでしまう。

そんな鈴の態度に多栄が驚愕する。


「鈴、余り多栄を困らせるなよ。」


それだけを警告して俺は雪南を伴い、離宮へと向かう。


「鈴は、大人しくしますかね。」


雪南が後ろを振り返る。


「大丈夫だろ。多栄が慣れるまで須賀が居る。須賀は進行役を引き受けたぞ。」


俺が必要な情報だけを雪南に与えれば、後の事は雪南が全てやってくれる。


「さてさて、万里の娘…。どんな姫様が来たのやら…。」


離宮への渡り廊下を歩きながら、雪南がニヤニヤとする。


「何処まで行っても己は人質なのだと自覚だけをしてればいいのだがな。」


お姫様気分で乗り込まれても、こちら側としてはチヤホヤなどするつもりがない。

いつだって傷付くのは女子だとわかってて、俺も人質に出されたか弱い女を傷付けるだけの漢にならなければならない。

渡り廊下を抜け、奧殿へと向かえば、廊下の途中に居た兵士が


「そこで止まれっ!」


と俺に向かって刀を構える。

兵士が着てる甲冑は由の物…。

この兵士が由から彩里の護衛でついて来た1人だと把握する。


「誰に向かって刀を向けてる。こちらは、この屋敷の主、黒崎 神路様なるぞ。」


雪南が兵士に声を上げる。

この婚姻に向けて、天音の別邸は義父から貰い受けたばかりだ。

半人前の俺でも、この別邸では御館様という扱いにはなる。


「し…失礼を致しました。」


歯ぎしりをする兵士が眼に浮かべる憎しみは、そのままに、しおらしく頭を垂れて道を譲る。


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