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戦場に響く鈴の音
第15章 陵辱
そんな若造の言葉などを、そうそう聞き入れる神国では無い。
寧ろ、神国は笹川の内戦で難民や野盗が由から白銀山脈を乗り越えてまで侵入して来る事の方が問題だと、笹川を討ち取った蘇へ文句を飛ばして来た。
そこからは宇喜多の出番となる。
笹川を討った後始末として野盗狩りを俺にさせながら、蘇に優位な条件で由との和平交渉へと臨む。
そこで、持ち上がったのが笹川の姫、彩里の存在だ。
黒崎と婚姻させる事で笹川の後ろ盾に蘇の200万の兵が付くと唆された馬鹿な彩里は形だけの婚姻だと、ノコノコ天音へ現れた。
秀幸の考えは…。
笹川の姫などどうでもよい。
姫は俺の子を黒崎の子として産むだけの利用価値しかないからだ。
子さえ成せば子は黒崎が引き取り、彩里は由に帰すも良し、邪魔だと殺す事も厭わない。
生まれた子は、拾われっ子の俺の子とはいえ由の笹川という由緒ある家柄の血筋である限り、今後は誰だろうと正当な黒崎の子として認めざるを得なくなる。
それは男でも女でも構わない。
男なら、そのまま西元を治める事を神の帝から認められている。
女なら、それなりの名家から婿養子を入れるだけで良い。
何よりも、その子は蘇の黒崎だけではなく由の笹川の血を引く子であり、笹川当主を頼りない孩里から奪い取る為の道具として利用が出来る。
そう遠く無い将来、蘇は無駄な血を流す事なく笹川の領土を手に入れる事になる。
だから何も迷わず、蘇の為、大河の為に、彩里を孕ませてしまえと高笑いする秀幸の声が俺の頭の中を渦巻く。
眼に目一杯の涙を浮かべる女に問う。
「選べ…、今すぐに由に帰り、弟と共に叔父に討たれて滅びる道を歩むか…、それともお前が言う下賎の血を宿す子を孕み弟を笹川当主として守るのか…。お前自身で路を決めろ。」
彩里がどちらを選ぼうと俺は神が示す路を歩き続けるだけだ。