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戦場に響く鈴の音
第15章 陵辱
「黒崎の子を成すまでは毎日でも通ってやる。子さえ産めば、後はお前の好きにしろ。」
吐き捨てるように言い、崩れ落ちた彩里を見捨てて部屋を出る。
「要件は済みましたか?」
廊下で俺を待つ雪南が苦味を潰した様な表情で聞いて来る。
俺の屈辱は家臣である雪南の屈辱だ。
こんな風に女を傷付ける様なやり方でしか黒崎を守れない情けない嫡子に同情してる。
「とりあえず、1日1回は通うしかねえよ。それが婚姻の儀の仕来りなのだからな。」
彩里と当たり前の夫婦生活をするつもりは無い。
あくまでも彩里は人質であり、名ばかりの嫁…。
「あの老婆達は?」
「更に奥の部屋へ行くようにと言い付けました。黒崎様が離宮に渡る時は姿を消せと言い含めてあります。その言い付けを守れぬならば由に帰されるか、警護の兵士に切られる覚悟をしろと…。」
母屋に戻れば、仕事があるからと雪南が姿を消す。
風呂に入りたいと思う。
無理矢理に嫌がる女を抱いて、汚れた自分の姿が惨めで泣きたい気分にしかならない。
「黒崎様っ!」
風呂に向かおうとした俺に向かって呼び止める声がする。
「多栄か…、悪いが今から俺は風呂に入る。俺の着替えを鈴に用意させてくれ。話なら、その後で聞く…。」
多栄にそう申し付けても多栄は青ざめた顔で叫び出す。
「その…、申し訳ございませんっ!その…、鈴様が何処にも見当たらないのです。」
「どういう事だっ!?」
鈴の安全の為に付けたはずの多栄が鈴を見失ったと半狂乱になってるとか笑えない。
「かくれんぼをしようと鈴様に言われて…。」
ガタガタと震え出す多栄の頭に手を置いてやる。
今日はもう充分に女を傷付けた。
幾らしっかりしてるからと言って、まだ幼い多栄を責める気にはならない。