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戦場に響く鈴の音
第15章 陵辱
鈴が消えた状況を多栄に報告させる。
「屋敷内は父と自分と須賀殿で隈無く探しました。今の捜索は屋敷内に居る全ての女中達にも協力をさせ、外の警護兵にも屋敷周辺や森の方まで探させておりますが、未だ鈴様は見つかっておらず…。」
笹川側の誰かに拐われたのではないかと誰もが神経を尖らせる。
「鈴が屋敷の外に出たのを見た者は居るのか?」
「いえ、警護兵の全てに確認をしましたが、鈴様が出て行く姿を見た者など居りませぬ。」
屋敷を取り囲む兵は2000人も居る。
例え、幼子とはいえ姿を見られずに外へ出る事は不可能だ。
「やはり、鈴は屋敷内に居るな。」
「では、離宮の方へ?」
俺を追い掛けて離宮へ向かった可能性はある。
そこで笹川の人間に捕まったと考えるのが妥当だが、笹川の人間はずっと雪南が見張っていた。
それに母屋よりも離宮の方が警護兵は多い。
鈴が少しでも悲鳴を上げれば、笹川の不審な行動を咎める兵達が一斉に離宮へ雪崩込む。
そのくらい、頭の良い鈴なら承知の上…。
だとすれば、何故、鈴は姿を消した?
「俺の部屋と鈴の部屋は探したのか?」
そこを多栄に確認すれば
「はい、そこは一番初めに探しました。」
と答えが返って来る。
落ち着かない鈴が自分で姿を消した。
頭の良い鈴には、自分が何処に隠れれば多栄に見つからないのかがわかってる。
「多栄、安心しろ。鈴は俺の部屋に居る。だから兵達には鈴を探す必要がないと伝えてやれ。」
「黒崎様の部屋にですか!?」
俺の言葉が信じられないと多栄が目を見開く。
「黒崎様のお部屋は何度もお探ししました。」
部屋に向かう俺の後ろをついて来る多栄が不満を漏らす。
多栄が言うように、部屋は無人だ。