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戦場に響く鈴の音
第15章 陵辱
縁側になる廊下側の部屋から奥の部屋へと移動する。
そこも、やはり無人であり
「やはり、居ませぬ。」
と多栄がため息を吐く。
多栄は武家の娘で育ちが良い。
生憎だが、俺と鈴は卑しい生まれの身…。
「多栄が探せないとわかってる場所に鈴は居る。」
そう多栄に教えて押し入れの戸となる襖を開ける。
「まさかっ!?」
「その…、まさかだ。」
押し入れには俺の衣装箱がある。
育ちの良い多栄は、主の持ち物を勝手に触る様な下品な事を絶対にしない。
それを知ってて鈴はそこへと潜り込んだ。
鈴が3人は入りそうな大きな衣装箱の蓋を開ければ、頬を膨らませて拗ねた仔猫が俺を睨む。
「多栄は…狡をした。多栄が鬼なのに、神路に探させた。」
衣装箱の中で俺の着物に埋もれた気まぐれな仔猫がそっぽを向く。
「狡をしたのは鈴の方だ。多栄を困らせるなと俺は言ったろ。」
手を差し伸べれば俺の妄想のように幼子が両手を広げて俺に抱けと無言の命令を出す。
ゾクゾクさせられる。
鈴を抱き上げて、その姿を心配する多栄に見せてやる。
「鈴、多栄に謝れ…。」
仔猫の躾をするのは、主の俺の役目…。
「多栄、悪かった。」
偉そうな仔猫は俺に抱かれたまま、そう多栄に声を掛ける。
「いえ、鈴様がご無事なら、それが何よりです。」
安堵する多栄が満面の笑みを浮かべる。
鈴は多栄を試しただけだ。
俺の命令だけで鈴の護衛をしてるのか、それとも鈴を本気で心配する人間かを見極める為だけに、こんな騒ぎを起こした。
「須賀や寺嶋にも多栄から謝っておいてくれ。」
そう多栄に伝えれば
「失礼致します。」
と多栄は俺の部屋から駆け出す。