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戦場に響く鈴の音
第15章 陵辱
「俺の着物がぐしゃぐしゃだな。」
拗ねた仔猫を叱れば
「そこら中に見張りが居る屋敷では、かくれんぼなんか普通には出来ない。」
と開き直って来る。
「見張りは減らすと寺嶋が約束した。」
「でも、まだ多い…。」
「こんなはしたない事が雪南に知られたら、俺の着物を鈴が畳み終わるまで遊ばせて貰えないぞ。」
「どうせ一人じゃ…、遊べない。」
俺が居なかったから悪いのだと譲ってはくれない鈴に笑う。
「今は多栄が居るだろ?多栄は嫌いか?」
「多栄は良い人だ。」
人見知りの鈴だが、本気で自分の身を案じた多栄を認めてる。
賢い子だ。
姫だからとチヤホヤされて育って来た彩里とは違う。
とても綺麗な瞳が真っ直ぐに俺を見る。
政治的目的で彩里を手篭めにする様な汚れた俺を見るなと叫びたくなるほど、澄んだ美しい瞳だ。
「風呂に行く…、俺の着替えを持ってついて来い。」
抱き上げていた仔猫を下ろして風呂へ向かう。
「こんな時間からか?」
まだ夕刻前…。
鈴が訝しげに俺を見る。
このまま汚れた手で鈴を触りたくないだけだ。
「今日の仕事はもう終わったからな。風呂さえ済ませれば鈴とゆっくりと過ごせる。」
そんな苦しい言い訳を鈴が嬉しそうな表情で受け入れる。
「本当か?今日はもう、ずっと鈴と居てくれるのか?」
「ああ、夕餉の宴は皆と酒を飲み、鈴と床に入るまで、鈴は俺の傍を離れるな。」
「夕餉の宴には雪南も来るのか?」
忙しい雪南の心配までする。
「鈴が余計な問題を起こさねば、雪南はもっと鈴に会いに来てくれるはずだぞ。」
俺の嫌味に鈴が頬を膨らませる。
「もう、かくれんぼはしないよ。」
主の言い付けだけは守ってやると偉そうな小姓がそっぽを向く。