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戦場に響く鈴の音
第15章 陵辱
風呂の洗い場では、鈴が丁寧に俺の身体を洗い出す。
まるで俺が汚れてるのを知ってるかのように指の一本一本までを手縫いで丁寧に擦って洗う。
俺は鈴にされるがまま動けない。
そんな俺を怪しむように鈴が見詰めて来る。
「神路…、離宮で何かあったのか?」
鈴の質問が俺の心を抉る。
俺の嫁だと名乗る女を辱めて犯して来たぞ。
なんて事は鈴に言えるはずがない。
「鈴…、万里のオッサンを覚えてるか?」
あの戦場で、まだ鈴は6つだった。
「鈴が居た前の西元の城を燃やしたという武将で金色に光る獅子の兜を被った大きな漢だった。でも、鈴には神路を馬鹿にする嫌な漢に見えた。」
淡々と鈴は答えるが、その言葉から万里は敵だったのだという鈴の心の内を感じ取れる。
「強引で豪快な戦の相手だった。だが俺は意外と万里が嫌いじゃなかったんだ。戦だから仕方がなく万里と戦っただけだ。あの時、万里が命乞いをするなら本気で助けてやるつもりだった。いつかは万里と酒を飲める日が来れば良いとまで思える漢だったのに…。」
俺は直愛を使って万里を討った。
その結果が今の状況だ。
万里が好きだったくせに、今の俺はその娘を卑しめて無理矢理に手篭めにしてる。
それしか俺が黒崎として生き残れる路がないからだと、頭では理解が出来ても心の何処かが荒みそうになる。
「もしかして、万里が居なくて淋しいのか?神路…。」
俺の前に立つ鈴が俺の頭を抱えるようにふわりと抱き着いて来る。
淋しいなどと今までは考えた事も無い。
考える暇すらなく、必死に生きて来た。
親も知らず、何も持たぬ俺が死にたくはないのだと生きる為には必死になるしかなかった。
大河の御館様が俺が生きる路をくれた。
黒崎の義父が俺が居られる場所をくれた。
それ等は全て自分の手で手に入れたものじゃない。