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戦場に響く鈴の音
第2章 登城



始めよりかは幾分かマシにはなったが、結局のところ鈴がまともに食事をして睡眠を取る事など殆ど無いまま軍勢は燕へと到着する。


「直愛、お前はどうする?」


奥州の領地は燕から更に南にある。

だが、奥州の家ならば首都である燕にも別邸としての屋敷を持つ。

黒崎の領地は燕の西から西元城まで…。

本来の西元城の城主は黒崎の家臣から選ばれるはずだったが、8年前、支羅を落とす際に大城主大河の手前という事もあり、早り武功を上げた大河家臣の更に家臣であった梁間に任せる形となってしまう。

黒崎は大河の筆頭老中であるが為に主になる屋敷は燕に有り、自家の領地内であったとしても西元に興味を示す事はなかった。

そういう流れがある故に今回の梁間討伐という遠征の大将には俺が選ばれた。

裏切り者とはいえ身内を討つからには黒崎の領主が陣を取らねば示しが付かぬ。

黒崎の義父はもう老体に近い。

元服を終えたばかりの若造の初陣は最悪の状況を免れたという程度での凱旋となる。

せめて直愛が手柄を上げてれば…。

梁間の自害に怒りと虫唾が走る。

不機嫌になり、黙り込んだ俺を気遣う直愛がアタフタとして答える。


「大将である黒崎様の屋敷に寄らせて頂けるなら光栄であります。」


こいつの堅苦しい気遣いに笑う。


「神路でよい。」

「しかし…。」

「確かに蒲江は黒崎の家臣だが、奥州は大河付きの立場だろ?」


俺の言葉に直愛は更に狼狽える。

雪南はあくまでも黒崎の家臣となる蒲江の子。

対する奥州は黒崎よりも身分は低いとはいえ大河直属の兵のうち25万の兵を預かる兵士長の立場にある。

その息子が黒崎の家臣の様な態度を取れば兵士に示しが付かない事くらい直愛にもわかっている。


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