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戦場に響く鈴の音
第16章 意地
羽多野が居れば風真よりも前に座る羽多野の後ろに控えて座る事があるが、主と同じ上座に並ぶのは須賀には荷が重いらしい。
「直に慣れる。」
此度の婚礼の儀で10万人将となる須賀には柊と燕との間にある街で屋敷が与えられる事になる。
婚礼の儀の後の須賀は、羽多野の屋敷が柊に既に存在する為、西元や柊との連絡役として対応する事となる。
「慣れたりとかしますかね?」
自分は田舎者だからとため息を吐く須賀…。
須賀を脅すつもりは無いのだが
「連絡役となれば、いずれは黒炎に登城する機会も出て来るぞ。」
と警告する事になる。
「黒炎にですか!?」
「ああ…。」
この宴の席で黒炎に登城経験があるのは蒲江である雪南と風真である直愛だが、2人共、俺の付き添いでない限り黒炎の登城は許されていない。
宇喜多側家臣の中にも、そのレベルの家臣は居ないというのに、その程度の宴で須賀に緊張されても俺の方が困る。
ひと月後の儀の宴では黒炎に登城出来るレベルの黒崎家臣が一堂に会する事となる。
進行役の須賀がその宴を仕切る以上はしっかりとして欲しい。
「本当に進行役が私なんかに務まるのですか?」
家臣には聞こえない程度に潜めた情けない声で須賀が聞く。
「案ずるな。基本は雪南が仕切る。」
俺が須賀に答えると同時に雪南が広間の真ん中へと進み出る。
「一堂、表を上げろ。」
俺が出す命に従い、ひれ伏していた家臣共が頭を上げる。
このタイミングで雪南が口を開く。
「此度の婚礼の儀に伴う進行役は黒崎の10万人将である須賀 佳太(けいた)殿が引き受ける事と相成った。婚礼の儀の状況は須賀進行役の進めにより新郎は新婦との新婚生活を行う儀を恙無く済ませた事を報告する。」
仰々しく雪南は言うが、恙無い新婚生活が始まったとは思えない俺だけが笑いを堪える羽目になる。