この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
戦場に響く鈴の音
第16章 意地
嫁は1人だが、妾が何人も居るという武将などよくある事…。
大河の御館様ですら、妾は数人居る。
蘇一と謳われた花魁の胡蝶が新造の時に未通揚げしたのは御館様という話は有名だ。
嫡子となる子を孕ませるのが、あくまでも嫁というだけで、愛護する女は別だとする漢は少なくない。
「はむっ…。」
俺の膝の上で俺が箸で掬った肉に喰らい付く仔猫を俺が猫可愛がりしてたとしても気に留める者は誰も居ない。
寧ろ、滝沢のように俺を咎めて痛い目を見る方が馬鹿なのだと考えてわざと俺と鈴から視線を外す者が多い。
「美味いか?」
小さな口をモグモグと忙しく動かす鈴に問う。
「斉我の料理はとても美味しい。あの芋の煮付けも斉我が考えたと聞いた。」
「鈴が読んでいた料理本も斉我が書いたものだ。」
「斉我は凄い漢だ。」
仔猫がご機嫌に笑うだけで俺は満足する。
「いっぱい食えよ…。」
「神路もだ。」
「俺は鈴が子豚になったら食うと言ったろ?」
「鈴は子豚になんかならない。」
気に入らなければ、ぷいと俺からそっぽを向く。
そんな鈴の耳に息を吹き掛けて囁く。
「俺の為であってもか?」
ピクリと鈴の身体が硬直する。
息を吹き掛けた耳が紅く染まる。
鈴の着物の袂から手を入れて鈴の胸を指先だけで撫でてやる。
「神…。」
鈴が家臣達が並ぶ下座から顔を隠すように俺の胸元に顔を埋める。
「もっと柔らかな方が俺は好きだと言ったろ?」
まだ肉の少ない胸のくせに、指先では固く突き出た突起物が転がされる。
「だから…、鈴は頑張ってご飯を食べてる。」
そう言って鈴に悪戯を繰り返す俺の手を退けろと鈴が言う。