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戦場に響く鈴の音
第17章 自慰
彩里の思い描く戦略などガキの策略だと鼻で笑ってしまう。
当初の計画では、笹川の姫として下賎の生まれである俺を服従させてしまえば、黒崎の力で笹川の当主に弟を確立した後に、西元を笹川のものに出来るだろうくらいの気持ちで蘇に彩里は来た。
それが昨日の状況で、蘇はそう甘くないと感じ取り、今朝は彩里の色仕掛けで俺を懐柔すれば良いくらいに考えを変えている。
少しでも彩里が、その色気がある女ならば俺も早々に苛立ったりはしないのだろうが、無意味に放たれる無様な色気だと胸糞が悪い感覚しか感じない。
まず部屋中に炊かれた甘ったるい香(こう)の香りが鼻につく。
そして眼が痛くなるような真っ赤な花弁の中に居座る女が作り出す偽りの笑顔が俺の神経を逆撫でする。
その女が真っ赤な口を大きく開く。
「春までとは?」
当たり前を聞く彩里を世間知らずだとしか思えない。
「由は、ただでさえ冬越えが辛い国だろ?だから、お前の親父は冬越えの為にと西元を狙って討たれた。」
「それは…。」
「それは、万里の兄弟だろうと息子だろうと条件は同じはず…。つまり春までは兵を掻き集めるどころか、生きる事すら難しいという状況で戦を仕掛ける馬鹿は居ないって事だ。」
「ですがっ!」
「案ずるな…、笹川には情けとして米と塩を分けてやる。お前の親父が欲しがった西元には腐らせるほどの米があるからな。」
だからこそ蘇は西元を普通の城ではなく、籠城が可能な砦として活用している。
米は古米になるほど余ってるのも事実である。
その古米を笹川の領地でバラ撒くだけで孩里を守る為の兵士を集める事は楽勝なはず…。
そのやり方ならば、わざわざ蘇の兵士が笹川の領地に出向く必要はなくなる。