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戦場に響く鈴の音
第17章 自慰
その程度の条件でも、今の彩里は受け入れるしかないほどまで笹川は切羽詰まった状況なのだろう。
「何卒…、弟を…。」
悔しさに唇を震わせる彩里が呟く。
「そう思うならば、春までに黒崎の子を孕め。」
俺の冷たい命令に彩里が深く息を吸い、眼を閉じる。
そろそろ腹が減ったとか考える俺からすれば、さっさと要件を済ませてしまいたい。
彩里が用意した布団に座り
「妻として、何をすべきかわかってるのだろ?」
と彩里に問う。
覚悟を決めたと言うのならば、面倒な事は彩里にやらせて終わらせたい。
「私は…、何をすれば…。」
声や顔ばかりが厳つい女のくせに、仕草だけは生娘のようにしおらしく狼狽えやがる。
「お前がやる事は一つだけだ。俺を勃たせて、自分で腰を振る。子種を抜いたら妻としての仕事は終わりだ。」
「この私がっ!?」
花街の遊女の様な真似は出来ぬと彩里が怒りを滲ませる。
「出来ぬなら…、弟を見殺しにしろ。俺だって、こんな面倒臭い事をやりたくねえからな。はっきり言って時間の無駄だ。」
「出来るわ…。」
弟の為…。
笹川の為にと彩里は姫としてのプライドだけでムキになる。
「なら…、さっさとやれ。」
俺はただ、早く鈴のところへと帰りたいだけだ。
女を陵辱するようなやり方は俺の性にあわないと感じた。
あんな、やり方を続ければ、情けない話だが俺は多分、彩里に同情を向けてしまう。
彩里は人質…。
花街や梁間に売られた胡蝶や鈴と同じ思いを彩里が抱けば、俺の中で必然と同情が生まれる。
だから弟思いの彩里には自分の意志でここに居るのだと押し付けるしかない。