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戦場に響く鈴の音
第18章 打掛
「勘弁して下さいっ!」
へっぴり腰の須賀だが、一応は俺が振るった刀を刀で受け止めながら器用に逃げ回る。
「やかましいっ!武士なら、この程度の刃に自分から挑んで来い。」
「婚姻の儀の最中である新郎が進行役に切りかかれとか…、無茶苦茶であります。」
「俺には、その婚礼がどうでもよいからな。」
「くれぐれもお怪我など無きようにお願いしますぞ。」
諦めた須賀が刀を握り直す。
俺には及ばないとか言われてはいるが、羽多野の一門では須賀もそれなりの使い手である。
寺嶋も須賀の左後ろで刀を構える。
右利きである須賀を援護する構え…。
俺が右利きである場合は有効的だと言えるが、生憎の俺は両刀使いで左利きにもなれる。
刀を左手に持ち直し、須賀と寺嶋の間を分断するように刀を振り下ろしてみせる。
「へっ?」
須賀が間抜けな声を出し、慌てて俺が居る左側へと刀を振れば左側に控える寺嶋は嫌でも後ろへ下がり出す。
その須賀の背の方へと回り込み、須賀の右側より須賀の首元に刀の峰を当て込む。
「参り…ました。」
これが敵なら須賀の首は刀を認識した瞬間に飛んでいる。
寺嶋も須賀を人質に取られた段階で須賀の援護の役目を果たせてはいない。
「須賀は右利きにしか対応が出来てない。寺嶋は須賀の動きだけしか見えていない。仲が良いのはいい事だが刀の練習相手くらいは、たまには他の者とやれ。」
結局、須賀と寺嶋では俺の練習相手にもならない。
雪南が居ればと、勝手な時だけ恋しくなる。
「他の兵士も呼べ…。」
そう命令すれば、とりあえずと寺嶋が警護の兵士を呼びに走る。
「本気の剣の稽古なら、訓練所から黒崎様に相応しい手練の者を連れて来た方が良いかと…。」
須賀が情けない声で言う。