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戦場に響く鈴の音
第19章 強欲



「私の嫁…、ですか?」


流石の雪南も、こういう話題には眉を寄せて露骨に嫌そうな表情を見せやがる。


「そうだよ。雪南も蒲江の為に嫁を貰う事とか、一度でも考えた事があるのか?」


俺の意地悪な質問に雪南が一瞬だけ考え込む。


「まあ、一応にはなりますが結婚くらいは考えた事がありますよ。但し、私の嫁候補は黒崎様に取られましたけどね。」


ニヤリとする雪南からの仕返しで酒に噎せて咳き込む羽目に陥る。


「なっ!?ゲボッ…、雪南のよ…め…を俺が!?」

「話はしましたよ。鈴を御館様が引き取った場合、蒲江へ嫁に出す予定があると…。」

「それは例え話だろっ!?」

「いいえ、鈴は器量が良く賢い女子です。台所で庖丁人からのウケも良い。尚且つ、養女だとしても黒崎の姫となるのならば蒲江の嫁としては、これ以上に相応しい女子は居ないと考えた事くらいはあると言う話です。」

「マジで考えたのか…。」

「三男故の気ままな身とはいえ、私も年頃の漢ですからね。条件の良い嫁なら考えますよ。」

「───鈴はやらんっ!」

「ええ、だから貴方に取られたと言ってるではありませんか。」


鈴の事となれば狼狽える俺を肴にして、雪南は涼しい表情のまま優雅に酒を飲みやがる。


「他の女子とか…、考えた事はあるのか?」


雪南が相手では、本当に鈴を取られそうな気がして来る。


「ありませんね。今のところ、嫁として話があったのは鈴だけでしたから…。」

「いや、付き合ってる女子とか…、気になる女子とか…。雪南が想う女子は居ないのか?」

「私がこの世で想う漢は貴方様だけですよ。」


綺麗な顔を意地悪に歪ませて、クスクスと嫌味な笑い方をする雪南が俺を馬鹿にする。


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