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戦場に響く鈴の音
第19章 強欲
「珍しい本があるお店に行った。着物を売るお店にも…。雪南は砂糖や塩を売るお店に行き、鈴と多栄は多栄が好きなお茶屋で団子を食べながら雪南を待った。」
懐かしげに鈴が眼を細め、湖の向こう側にある光を見る。
「綺麗な音楽が聞こえた。雪南が琴の音だと教えてくれた。鈴はあの音が好きだ。次は神路と聞きたい。」
鈴にとっては余程、幸せな時間だったのだろう。
控えめで小さな花が咲いた様な笑顔を見せる。
その笑顔が愛おしくて俺は唇で鈴の頬に触れる。
「婚姻の儀が終われば、一緒に行こう。」
「柑へか?」
「ああ、次は2人だけでな。」
「本当か?」
こんな小さな約束に嬉しそうな顔をしてくれるのならば、幾らでも約束くらいはしてやりたいと思う。
「鈴が子豚になるくらい団子を食おう。」
「鈴は子豚になんかならないっ!」
笑いながら俺を叱る鈴を抱き上げて張り出しから連れ出す。
「今夜は、もう冷える。床に入る時間だ。」
「うん…。」
俺の可愛い女が首に細い腕を回し、俺の耳を甘噛みして来る。
「愛してる…。」
鈴がそう囁くだけで興奮する。
こいつの愛に応えたい。
いつだって満足をさせてやりたい。
何よりも幸せにしたいと願う。
すっかりと様変わりした俺の寝室は真っ白な毛皮だらけで雪景色の様に見える。
真っ白な雪の上へ、そっと鈴を降ろせば小袖の下に着た撫子色の肌襦袢の裾を白い太腿まで鈴が指先で摘んで引き上げる。
「来て…。」
小さな手を大きく広げて俺に抱けと強請って来る。
鈴の太腿を撫でながら腕の中へと抱き寄せれば瞳を伏せた鈴が幸せそうに笑う。
俺が守りたい小さな幸せ…。
鈴の帯を解けば撫子色の着物が小さな肩から流れ落ちる。