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戦場に響く鈴の音
第21章 円満
この最後の確認で互いの異議申し立てをする事で、今後の夫婦生活が円満になるか、破局となるかが決まってしまう。
「この確認が済めば、神路様は母屋へ戻られますのか?」
長々と婚姻の儀の確認に必要な事を述べ続ける須賀を無視する彩里が俺に小さな声で問う。
「離宮に居ても仕事が進まぬ。」
月の障りが来てる彩里を抱いても無意味だという態度のまま、俺は彩里を突き放す。
俺という夫にとって彩里という妻を孕ませるのは仕事の一つに過ぎない。
俺の態度に彩里が険しい表情で睨んで来る。
「それで…、双方の意思の確認ですが…。」
険悪な空気を醸し出す夫婦に向かって須賀がおずおずと怯えた表情で確認をする。
「別に…。」
俺がそう答えれば立ち会う義父はため息を吐く。
「私は異議がありますわ。」
勝気な彩里がハスキーな声で怯える須賀を威嚇する。
「いっ…、異議でありますかっ!?」
自分で対応が出来るかが不安な須賀は助けを求めるように義父や雪南の方へと顔を向ける。
「人質の存在で異議など言える立場か…。」
吐き捨てるように羽多野が言う。
「私は黒崎の子を産む為の妻のはず…、人質の扱いを受ける言われはごさいません。」
彩里が語気を荒げる度に俺の腕にはブヨブヨとした乳が強く押し付けられて吐き気がする。
「ならば、どういう扱いをお望みか?」
狼狽えるだけの須賀では彩里を制する事が難しいと判断をした雪南が口火を切る。
「私は黒崎の妻として扱われたいと申してるだけですわ。」
笹川の姫である彩里が放つ切望の言葉など黒崎の家臣である雪南や羽多野に鼻で笑われ、あしらわれる。