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戦場に響く鈴の音
第21章 円満
「怒りが…、抑えられないのだ…。」
義父にすら話した事のない話を怯える鈴の為に話してやる。
「怒りとは?」
「全てに対する怒りだ。この世界の全てが滅びれば良いと思うほどの強い怒り…。どうやら俺の中には鬼が居るらしい…。」
「何故、そんな怒りを感じるのだ?」
「さあな、それは俺にもよくわからぬ。」
黒炎に来て、俺を馬鹿にした兵士を何人か殺した。
兵士は俺を威嚇する為に刀を構えただけだったが、俺は本気で、ある兵士を殺してしまった。
一人を殺せば、怒りと憎しみの連鎖が折り重なり、兵士達は本気で俺を殺そうとして襲って来る。
事の重大さに気付いた御館様が現れた時には、黒炎の庭は血の海で染まり、俺は近寄れば容赦なく殺すと兵士を威嚇していた。
「それで…、大河様は…?」
鈴が驚きに瞳を大きくする。
「兵士達を下がらせて、俺の前に進み出た。」
刀を握った御館様との一騎討ちをした。
御館様は強かった。
いや、幼子だからと油断した兵士達とは違い、御館様は本気で容赦なく俺に刀を振るう人であった。
「御館様に切られたと思った。だが俺の鳩尾には御館様の刀の束がめり込んでいた。」
意識を失った俺を抱えて御館様は一人で黒炎の中へと戻られた。
「どうなったのだ?」
「三日三晩、俺は熱に魘されていたと聞いている。その間は誰も近寄る事を許されず、御館様だけが俺に付き添ったらしい。」
「何故、大河様は神路を殺さなかったのだ?自分の兵士を殺されたのに、神路を生かしたのだ?」
「『鬼と戦え。』…目覚めた時に俺に御館様はそう言った。俺の中に居る鬼と戦えと…。」
「その鬼は?」
「今も俺の中に居る。」
そして、その鬼を感じると俺は我を失くし、全てを破壊しようと殺戮を繰り返す。