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戦場に響く鈴の音
第22章 初夜



ひと月、屋敷に閉じ込められて夫婦生活を強いられた夫婦が初めて外出を許される日…。

婚姻の進行役の道案内で神国の帝の尊が祀られているという祠まで参拝をし、そこの宮司に夫婦となった報告を済ませ、帰りは一つの輿で屋敷へと帰る。

それから婚姻の儀の宴を開き、親族や家臣達の前で帝に認められた夫婦が披露されるのだが、笹川の親族が招待をされない儀など略式で終わらせば良いと安易に考えてた俺へ最初の夫婦喧嘩を彩里の方が仕掛けて来た。


「冗談じゃねえよ…。」


彩里を無視して自分用の輿に乗り込み扉を閉ざす。

祠まで大した距離ではないが不貞腐れる俺は昼寝を決め込む。


「着きましたよ。」


輿の戸を開く雪南が俺の方を睨む。


「彩里だけ行かせれば良いのではないか?」

「そんな婚姻の儀が成立しない事くらいおわかりですよね。」


寒い冬空の下で雪南の声がますます俺を寒くする。

略式の場合、夫婦が署名した紙切れをこの祠に届ければ良いだけだったのに、正式にやる為には祠の本殿まで俺は花嫁である彩里を連れて長い石の階段を登る必要がある。

ここから先は夫婦しか入れない。


「さっさと行くぞ。」


と言うのに彩里はモタモタと長い花嫁衣裳を自分の腰周りに掻き集めるだけで精一杯だ。


「動けぬならば、そんな衣裳は脱げ…。」

「これは笹川の正式な花嫁衣裳です。母が私の為に用意してくれた大切なものですわ。」

「戦場じゃ、動けぬ者は真っ先に死ぬんだよ。」

「私は婚姻に来たのであって、戦場に来た訳じゃありません。」


階段下でもたつく俺に雪南が


「本来は新郎が花嫁を抱いて上がる階段なのですよ。」


と耳打ちをする。


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