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戦場に響く鈴の音
第22章 初夜
「あーっ!?面倒臭えーっ!」
そう叫び、米俵のように彩里を肩へ担ぐ羽目になる。
プッと須賀が吹き出す音を聞いて俺が睨めば須賀は慌てて俺から顔を背けやがる。
「ちょっ!下ろして…、無礼なっ!こんな階段くらい自分で上がれますわ。」
うるさい彩里が俺の肩の上で暴れれば、俺は鈴からの冷たい視線をたっぷりと味わう事となる。
「黙れ…、口を閉じろ。さもなくば殺すぞ。」
キレかけの新郎は、そうやって花嫁を黙らせる。
ただ鈴の視線から逃げるようにして彩里を担いで階段を登る。
50段以上もある階段を上り切れば
「お待ちしておりました。」
と真っ白な装束に身を窶す宮司が彩里を担いだ俺に頭を下げる。
「まだ階段はあるのか?」
「いえ、こちらの社にお入り下さい。」
宮司が俺と彩里の目の前に建つ、社の入り口へと案内をする。
ひとまずは、クソ重い女を下ろせると彩里を肩から下ろしてホッと息を吐く。
「さあ、こちらへ…。」
社の奥へと宮司の案内で突き進む。
まるで迷路のように入り組んだ廊下を歩かされる。
「ここには帝の尊が祀られております故…。」
野盗や盗賊の類いに襲われても真っ先に宮司が帝の尊を守って抜け出せる仕組みになっているらしい。
何度も同じ場所を通るような感覚に吐き気がする。
「新郎は具合が悪いようですが、大丈夫ですか?」
浮世離れした宮司が俺をクスクスと笑い出す。
「てめぇ…、何者だ。」
「ただの宮司ですよ。お侍様…。」
「嘘は嫌いだ。」
飾り物とはいえ、一応は人を切れる刀の束を握り宮司に向かって構える。
「お止め下さい。この廊下での抜刀はご法度。人斬りは帝への反逆と見なし親族郎党までをも死刑とします。」
宮司の顔が歪む。