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戦場に響く鈴の音
第3章 羽織
俺の立場を考える御館様が俺の初陣には随分と悩んでくれたと義父から聞いている。
元服に合わせて秀幸の援軍に黒崎から兵を出すべきかとも話はあったが、結果の全てが宇喜多の手柄になると判断した御館様がその話を断ったくらいだ。
そして回って来たのが黒崎領地内での梁間の反乱行為だったが、梁間の裏切りは発覚したものの反乱と呼べるほどの状況になる前に出兵する事になった。
手柄と言えるほどの手柄も無く帰って来た俺に家臣からの賛辞なんか期待はしてない。
しかし…。
「褒めるなら直愛に…。」
これは俺の御館様に対する甘えだ。
「奥州のか?」
「はい。梁間の裏を早馬で報告したのは直愛だと聞いております。」
「そうか…、では奥州に…。」
褒美を出す。
その気持ちを貰えただけで充分だと思う。
「それよりも…。」
自己満足した俺に御館様がニヤリとする。
「は?」
「西元よりお前が持ち帰ったのは奥州だけか?」
嫌な突っ込みを受ける。
「と、言われますと…。」
ひとまずはとぼけよう。
「なかなか可愛いと聞いた。お前には初めての小姓だったな。何故、一緒に登城しなかった?」
俺がとぼければ御館様はストレートにものを言う。
相手に逃げ道を与えないのが大河という人間だ。
こういう人だからこそ先の大城主の嫡子というだけではなく、誰もが若き御館様を蘇の大城主として相応しいと認めてる。
俺を小姓にした時も家臣からの反対は半端なかったはずなのに…。
『忠義を育てるのに身分や生まれは関係が無い。』
と一喝で伏した。
観念して御館様に事実を報告する。
「まだ御館様の前に出せるほどの礼儀を仕込んでおりません。」
俺の報告に御館様は大笑いする。