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戦場に響く鈴の音
第22章 初夜
そんな、くだらない言い争いをしているうちに彩里の部屋の前まで到着する。
「少し…、模様替えをしましたの…、神路様がお気に召すと嬉しいのですけど…。」
頬を恥ずかしげに赤らめた彩里が初めて見せる少女らしい仕草でゆっくりと勿体付けながら戸を開く。
襖戸の向こう側から俺に向かって煌々たる光が射した為に、何事かと目を細める。
やたらとキラキラした部屋…。
この時間まで無人だったというのに、部屋の隅に設置されいる暖炉では大量の薪がくべられて燃え盛っており、家具として設置された西洋風の戸棚の上にはアルコールで火を灯すステンドグラスで出来たランプが部屋中を虹色の灯りで照らしてる。
またしても、派手好きな笹川のつまらない演出かと思うだけで10倍くらいの疲れを一気に感じてしまう。
「これ…、綺麗でしょ?」
ステンドグラスのランプの一つを手の平に乗せる彩里が問う。
趣味の悪さはともかく、彩里にも普通の少女らしい楽しみがあるのかと感じると微かにだが感心しなくもない。
俺が育てたせいなのか、鈴にはそういった普通の少女らしい部分を感じた事がない。
それはそれで同じ女子として不安だと思うから少しは彩里の話を聞いてやろうと部屋にあった椅子に座って彩里と向き合ってみる。
「それは…、舶来品か?」
「ええ、大城主様より賜ったものをお父様が下さったの…。」
舶来品を輸入して扱えるのは四大国の大城主だけと決まっている。
「万里か…、どんな漢だったのだ?」
「お父様は強かった。そして誰よりも優しかったわ。」
父親自慢…。
俺には、よくわからない。
義父は凄い人だと思うが、人様に対し、これ見よがしに自慢するべき人だとは思わない。