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戦場に響く鈴の音
第23章 笑顔
結局は俺が折れてやるしかないのかと苦笑いが出る。
「俺が悪かったから…。」
そう伝えて鈴の頬に口付けをすれば、少しは機嫌を治す鈴が俺の方へと視線を向ける。
「柑へは、どのくらい行けるのだ?」
「2、3日程度だ。雪が本格的になる前に屋敷には戻る。」
「雪など…、降らねば良いのに…。」
泣きそうな瞳を閉じる鈴が俺の胸元に顔を埋める。
「春には天音を出る。」
「燕へ帰るのか?」
「いや、行き先はまだ言えぬ。鈴は留守番をするか?」
「あの女が居る屋敷でなど留守番はせぬ。」
「ならば、この冬だけは我慢しろ…。」
「鈴はいつだって我慢をしてる。」
まだ鈴は自分の感情を俺にぶつけるだけで精一杯だ。
「とにかく、今夜のような事が続くのならば鈴は義父の部屋で暮らせ…。」
可哀想だとは思うが、選ぶのは鈴だと俺には押し付ける事しか今は出来ない。
鈴が傷付く度に家臣達を振り回す訳には行かない。
「神路は…、鈴が居ない方が良いのか?」
俺の着物を掴む手に力が篭もる。
「そんな訳ねえだろ?」
怯える鈴を抱き上げて寝室の床へ寝かせる。
ただ鈴の唇だけを貪る。
口を開かせて舌を押し入れながら鈴の舌の裏から上顎の裏までを舐め回して口付けを交わす。
「────ん…。」
口端から唾液を溢れさせる鈴が息を求めて更に口を開く。
「っんは…。」
眉を寄せ、切ない表情をする鈴が可愛く息を吸う姿に笑いだけが込み上げる。
「笑うな…。」
小さく拗ねた声がするだけで、いつもの鈴だと安心する。
「笑ってない。」
「笑ってる。」
「鈴が可愛いからな。」
「子供扱いは嫌だ。」
「鈴はもう夫が居る大人の女だ。」
慰めにしかならないが俺にとっての妻は鈴だと示すしかない。