この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
戦場に響く鈴の音
第23章 笑顔
ヨシヨシと鈴の頭を撫でてやれば、鈴が口を尖らせる。
「やはり子供扱いではないか…。」
「そんなつもりはないぞ…。」
ただ眠いだけだ。
今日はやたらと疲れた上に、既に夜明け前という深夜になった。
「神路っ!」
「寝かせろっ!」
「他の妻で抱き疲れたとか言うつもりなのか?」
「誰も抱いてねえよ。」
「だったら…。」
「明日、柑に行くんだろ?頼むから寝かせろ。」
無理矢理に鈴を抱きかかえて眠りに落ちる。
夢の中で、あの宮司が俺を手招きする。
『お前…、何者だよ。』
『ただの宮司ですよ。』
首の後ろがチクチクと痛む。
『お前が鬼か…?』
『それを貴方が知るのは、もっと先の事…。』
それだけを言うと宮司が消える。
「おいっ!」
飛び起きて宙を掴む。
あれは…。
一体、何者だ?
その事ばかりが頭を過ぎる。
「神路…。」
小さな仔猫が俺の着物の袖を引く。
もう、完全に夜が明けた。
「起きて荷物を纏めろ。柑へ行くぞ。」
鈴の額に口付けすれば、僅かな笑顔を鈴が見せる。
「雪南も行くのか?」
「雪南は留守番だ。その代わりに多栄を連れて行く。」
「多栄を?」
「鈴の子守りで疲れてるからな。少しは実家に帰してやる。」
「鈴は子守りなどさせておらぬ。」
膨れっ面で床を出ようとする鈴を捕まえてから口付けをする。
「柑では二人だけになる。俺の傍を離れるな。」
拗ねて、はぐれたりされると大事となる。
今のうちにと言い聞かせる。
「わかっておる。鈴は神路の傍に居る。」
俺の顔に手を添えた鈴が約束する。
「神路は顔を洗って来い。鈴は台所で朝食の用意をさせる。」
ご機嫌な様子で鈴が部屋から飛び出す。