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戦場に響く鈴の音
第23章 笑顔



入れ替わりに雪南が部屋へと現れる。


「妻のご機嫌取りは下手な割りに、小姓のご機嫌取りはお上手なようで…。」


俺の顔を見るなりの嫌味は止めてくれと言いたいが雪南が顰めっ面をしてる以上は話を聞いてやるしかない。


「離宮で何か起きたのか?」

「夕べ、貴方が帰った後、キレた姫がアルコールランプを壁に投げ付けたとだけ言っておきます。」

「それで離宮はっ!?」

「無事ですよ。火はすぐに警備の兵が消しました。寺嶋が大量の警備を離宮に置いてた手柄です。」


但し、離宮に火を放った笹川の姫に怒りと憎しみを向ける兵が増えたと言う。


「どれだけ愚かなんだよ。」

「しばらく、姫には大人しくして頂きます。」

「俺が居なくても大丈夫か?」

「貴方が居ない方が姫には堪えると思います。」


仔猫よりも面倒な魔女の躾をしてやるのだと雪南が壊れた笑みを浮かべて笑いやがる。


「ほどほどに…な…。」


こういう時の雪南に容赦がない事を知ってる俺の背筋には冷たいものが流れ落ちる。


「躾のついでと言っては何ですが、離宮に風真を付ける予定です。」


元々鋭い雪南の瞳が更に鋭く細められる。


「風真をか?」

「そもそも西元城主、あれが天音を守護する者、羽多野に甘えて寺嶋や須賀に頼り過ぎておりますからね。」


それは事実だ。

焼かれた西元の復旧と奥州出身である不慣れを考慮して、風真には西元での城主として一部の責務しか与えられて来なかったが、本来の責務は天音まで含む領地の管理までが含まれる。

春には須賀は燕側の連絡役として天音を離れる。

寺嶋や羽多野も俺の駒として展開させるつもりならば、風真の躾も必要な事となる。


「全て、雪南の好きにしろ。」


その一言で雪南は満足そうに笑い部屋を出る。


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