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戦場に響く鈴の音
第23章 笑顔
「なあ、鈴…、寒くないか?」
雪だるまになった鈴に聞いたところで無意味だったと気付いた時には鈴が冷たい目で俺を見る。
「おっ父が着せてくれた服は充分に暖かいぞ。」
「いや、だから…、腹とか減ってないか?」
「さっき朝ご飯を食べたばかりだ。」
「あー…、退屈とかしてないか?」
「神路は退屈なのか?」
段々と鈴の表情が険しいものへと変わってく。
「鈴…。」
「何か変だぞ…、神路…。本当は柑へ行くのは嫌だったのか?」
「そんな事はない。」
「なら、何が気になるのだ?」
「鈴が気になる。」
「鈴が?」
俺は戦場で刀を振る事しか知らぬ。
雪南のように鈴を喜ばせたり、義父のように鈴を安心させたり出来る漢ではない。
日に日に女子らしくなり、綺麗になる鈴をどう扱えば良いのかさえわからなくなる。
「俺は…、鈴を笑わせるのが下手だからな。」
我ながら情けないとは思うが、それが事実だ。
なのに、そんな俺を鈴がクスクスと笑ってから手を広げて、いつものように抱き上げろという仕草をする。
「鈴?」
ただ普通に鈴を抱き上げれば鈴が俺の顔を両手で包むようにして口付けをして来る。
「鈴がこうしたいと思うのは神路だけだ。それでは、いけないのか?」
穏やかな笑みを見せる鈴はもう大人の女だと感じる。
「そういう事をされると今すぐに鈴を脱がせたいとか思う。」
「神路の助平…。」
「嫌いか?」
「好きよ…、鈴の神路だもの…。」
船の上で鈴と口付けを何度も交わす。
商人やら町人やらが遠巻きに俺と鈴を見るが、新婚だからと勝手な気を遣い、誰もが見て見ぬふりをして通り過ぎる。